理想的な開始時期

年齢…6才(5才~7才くらい)
歯並びの状態…上顎の前歯が生え変わる頃

初診相談に最適な時

お子さまの歯並びの初めての相談は、6才ごろ(就学されるころ)、上顎の前歯の乳歯が永久歯に生え変わり始める時期が最適です。 この時期に最初にご来院くださるのが理想ですが、お子さまの成長や発育の状態によってお口の中の歯並びの状態は様々ですので、上顎の前歯がすでに永久歯に生え変わってしまっている方もいらっしゃるかもしれません。特に女の子は成長が早いため、お早めに受診なさってください。 歯並びの状態に関係なく、6才になられたら、まず、ご相談ください。
初診相談

期間

来院の間隔については、実際に歯を動かしている時期には3~4週間毎に1回ずつの来院が必要です。また稀に装置を制作する為の準備に1ヶ月に2、3回来院が必要なこともあります。 一方、歯の生え変わりを観察しているような時期、あるいは保定期間などには数ヶ月に1回の来院となります。

矯正治療の期間は原則として、永久歯の良い噛み合わせが完成するまでとなります。したがって、矯正治療が終了するまでの時間は患者さまによってかなり異なります。

例えば小学生の患者さまなどでは、全身の成長発育が完了する中学生ないし高校生の時期まで観察を続ける必要がある場合も見られます。この間、実際に積極的に歯を動かしている期間は、1年半から3年が普通です。

このように矯正治療には時間という要素が非常に重要であるため、途中でやめることのないように、通院の見通しが十分についてから始めましょう。 また、転勤などの可能性がある場合、はじめにお伝えください。

期間

各不正咬合の紹介

1.交差咬合

幼稚園での歯科検診で見つけてもらうのがbestです。よく見られるのが、左右どちらかの上下乳犬歯において本来上の乳犬歯が下の乳犬歯より外側にある関係が、逆になっており、その結果下の顎が横にずれてしまっている状態です。ずれている側の奥歯ではものが噛みにくく、この状態を長く放置すると顔の下半分が横にずれて成長し続け、顔が非対称に歪んでしまうことになります。ですから、交差咬合はできるだけ早く発見し治療を開始することが重要になります。理想の開始時期は5~6歳です。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

交差咬合

2.開咬

本来、奥歯で噛んだ時上の前歯は下の前歯に覆いかぶさりその重なりが2~3mmあります。開咬という不正咬合は、その重なりがなく逆に開いている状態になっている噛み合せです。(写真-2)本来2,3mmの重なりがあるものが、なぜ開いているのでしょうか?歯というものは何かに接触するまで生え続けるのが普通です。前歯が上下方向に開いているという事は、歯の生えようとする力を何かが妨げているという事になります。それは何でしょうか?絶えず前歯で何かを噛んでいる。それは何ですか?ほとんどの場合、それは舌です。舌が上下前歯の間に絶えずあるため歯の萌出する動きを妨げているわけです。本来、舌の位置、姿勢は上の前歯の少し後ろにあり、決して歯の位置まで前には出てきません。人間だれしも日常生活で、舌がどんな位置、姿勢にあるかという事は考えません。

開咬

ですから舌を前に出すという癖を治すのは厄介なことになります。装置を用いて強制的に舌を前に出せないようにする方法もありますが、一生装置をするわけにもいきません。装置を止めた時にその癖が治っているという保証はありません。一番いい方法は、訓練をしてその癖を治すことです。そんなことできるのかと疑問に思われるかもしれませんが、写真-2の患者さまの訓練後の写真(写真-3)を見てください。この方の場合矯正装置は一切使っていません。熱心に訓練すれば結果が出るものなのです。

年齢を重ねると癖は固定してしまいなかなか治りません。かといって年齢が低すぎると、こちらの言っていることが理解してもらえません。ですから、この訓練のbestな時期は、小学低学年です。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

開咬

3.反対咬合、切端咬合

反対咬合の成り立ちは二つあります。一つは骨格的なもので、下顎が上顎より前に成長し上下前歯の関係が逆になっているもの。これを骨格性反対咬合と言います。 (写真-4)

骨格性反対咬合

もう一つは上下の顎の 関係には問題なく、上の前歯が本来の傾きより後ろ側(舌側)に傾いており、噛んだ時に下の前歯が上の前歯に誘導されて下の顎が前にずれていく状態のものです。これを機能的な反対咬合と言います。(写真-5)

反対咬合

骨格性反対咬合で下顎がかなり前に出ている場合(程度が強い場合)は、幼稚園児の頃(乳歯列期)から開始するのがbetterです。その他の場合は、上の永久前歯が萌出してからがいい時期です。
これらを放置しますと、下顎の発育がますます大きくなり機能的な反対咬合も次第に骨格性反対咬合に変わっていき、いわゆる受け口特有の顔貌になり治療の難易度が上がります。
切端咬合の開始時期も反対咬合の場合と同じです。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

4.上顎前突

いわゆる出っ歯という噛み合せの事です。たいがいの場合、上顎、下顎の前後的な関係で調和がとれていないことが原因となります。上顎が大きいときは当然上顎前突になりますが、日本人では下顎の発育不足で相対的に上の前歯が出ている場合が多いです。治療の原則は、一時期上顎の発育を抑制し下顎の成長を促す方向に作用する矯正力を用います。この不正咬合は顎(骨)の問題であることをよく認識していただきたいと思います。相談でお見えになったお母さまで、出ている上の前歯を後ろに傾けさえすればそれで治療が終わるというようなイメージをお持ちの方が時々いらっしゃいますが、そういうことをしますとますます下顎の前への発育を阻害することになり、結果顔の下半分が貧弱な顔貌になってしまいます。
以上のことから、開始時期は成長のある間で、9~10歳頃がbestです。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

上顎前突

5.過蓋咬合

これは、反対咬合や上顎前突と合わさって見られる場合が多いです。上下前歯の重なりが非常に深い状態です。開始時期は反対咬合や上顎前突に準じます。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

過蓋咬合

6.正中離開

上の前歯の生え変わりの時によく見られます。犬歯が萌出するときに押されて自然に治る場合がありますが、2番目の側切歯が歯列上にないとその力は1番目の中切歯に伝わりません。側切歯が内側に生えてきた場合は前歯4本をきちっと並べることにより問題を解決します。
開始時期は、7~8歳頃になります。側切歯が歯列上に並んでいる場合は10~11歳頃(犬歯が萌出する時期)まで待ってもいいでしょう。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

正中離開

7.叢生

主に上下前歯の並びがガタガタしている状態です。前歯ですから、特に上の場合はよく目立ちます。
叢生を改善するためのkey wordは「乳歯と永久歯の大きさの差」です。
乳歯は永久歯より小さいと思っていませんか。
これは、前歯では当てはまりますが、臼歯では逆で乳歯のほうが永久歯より大きいのです。(図-1)
前歯が生え変わる6~7歳頃では、前歯では永久歯の方が大きいですからがたつくのは当然と言えば当然です。
下の前歯ががたついて何が大きな問題になるでしょうか。多少brushingがしにくいという程度で大した問題にはなりません。歯ブラシの持っていき方で解決できます。急いで治療を開始する必要はありません。

図-1

では、上の前歯ががたついて何が問題になるでしょうか。上の前歯ががたつく場合、よく見られるのが2番目の歯が1番目の歯よりも内側にはえてくることです。(写真-9)
上の2番目の歯が内側にはえてくると物を咬んだ時下の歯に変にあたってきます。この状態を長く放置しますとあたっているところがすり減って歯の形がいびつになってしまします。歪になってしまってから前歯をきれいに並べても、上に前歯は目立ちますからやっぱり不自然な印象が残ります。ですから、上の前歯の叢生を治すのはできるだけ早い時期に開始するのがbetterです。

写真-9

治療方法としましては、先にも言いましたように臼歯部では乳歯のほうが永久歯よりも若干大きいということを利用し、乳臼歯の歯と歯の間を少し削って隙間をつくり、乳臼歯を後ろに移動して隙間を2番目の歯の所に集めてから並べるということになります。
(写真-10、写真-9の治療後)

写真-10

余談になりますが、相談に来られる患者さまのお母さまで、「歯列を横に広げて直すと言われましたが...」とおっしゃる方がいます。本当に狭い場合は拡大するときもありますが、たいがいの場合はその必要はありません。巷の歯医者で叢生を治す唯一の方法として流行っているみたいですが、そんなことを言われたら要注意です。
この場合の開始時期は7~8歳頃になるかと思います。また、多少歯がすり減って永久歯の形が変わってもいいという事であれば10~11歳頃になります。この場合、第1大臼歯に簡単な装置を装着しその位置が変わらないようにしておきます。もしこれを使わないで全ての永久歯が生え変わるまで遅らすと、臼歯部にある余ったスペースは第1大臼歯が自然に前へ移動することによりなくなってしまいます。

人によっては、上の大臼歯が下の大臼歯よりも前にある場合があります。
大臼歯が前にある分、小臼歯や犬歯の生える場所は当然足りなくなって、よく見られるのがいわゆる八重歯の状態になります。
この時は10~11歳頃に第1大臼歯を後ろに移動しておき、これから生えてくる犬歯や小臼歯の納まる場所を前もって作っておくことが重要になります。
こういう対処をしておくことにより将来永久歯を抜いて治療するやり方を回避することができます。(写真-11)
くれぐれも、「拡大をして...」という話には乗らないように。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

写真-11

8.両顎前突

上下の口唇が突出している状態で、あえて例えるなら猿のような口元のイメージです。
一番効果のある改善策は小臼歯の抜歯による治療です。第2大臼歯が萌出してから開始するのが無難です。
ただし、一工夫すれば第2大臼歯萌出前に開始することも可能です。13歳~

これら、説明の例として挙げました症例の術後の状態は、症例集にのせていますので合わせてご覧ください。

【矯正歯科治療に伴う一般的なリスクと副作用】

後戻り、歯根吸収、う蝕、歯周病、疼痛等があげられます。

両顎前突